2007年6月 1日 (金)

棋書の代作

 棋書で不思議なことは、おそらく代筆であろう本がプロ棋士の名前をつけて売ってあることである。
 名前をつけてうるのだから、一度はその棋士も目を通しただろうが、監修に近い立場でありながら、その人の著作として売られる本がほとんどである。
 端的に言えば、実作者の名前では売れないのでプロ棋士が名義貸しをしているのだろう。
 これは戦前までの国文学界に近い。実際には、若手が書いた文章にもかかわらず、「文学博士 ○○△△」という肩書きのある人間が著者名にないと、本は売れなかった。
 国文学ではそういった代作は、今ではかなり少なくなった。名義人のボスが監修のみで、実際の執筆や作業は別人であっても、心得のある人間が見れば、誰が骨を折ったかわかるように、凡例やまえがきなどに、執筆や作業にあたった人物の名前が記されている。
 棋書のように、執筆の協力者がどこにも示されず、代表者以外はどこを探しても名前がない本はかなり珍しい。
 国文学の世界が公平になったというより、世間で学者の肩書きがものを言わなくなった結果、あるいはボスの政治力の低下の結果なのかもしれない。

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2007年5月30日 (水)

手筋問題の著作権

 ここ三月ほど、NHKの将棋講座テキストを購入しており、附録の手筋集を解いている。
 手筋集を解いて思うのだが、手筋問題の著作権はどうなっているのか。
 詰め将棋には著作権がある。誰かが作った詰め将棋を、私が自作のようにみせかけて、ブログにアップしたり、本に載せては、著作権法に違反する。

 私は渡辺竜王のファンなので、渡辺明『将棋・ひと目の手筋―初級の壁を突破する208問』(毎日コミュニケーションズ 、2006.08)を持っている。この本と、今年度の将棋講座附録と、問題の重複がままある。
 詰め将棋集なら、既出のものと重複をできるだけ避けるべきである。だが、手筋集は、局面が頻出するから手筋集なのであって、あまりにも稀な例ばかりでも役に立たない。

 手筋集なら、既刊の手筋集を何冊か使って新しい本が作れそうである。しかし、プロがやっても問題ないが、私が本にすれば訴えられそうな気がありありとする(そもそもアマ三級が監修する本を誰も買わないだろうが)。

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2007年5月18日 (金)

凡人の悲哀

 将棋指しのブログが増えているが、「キラリっ娘のそよ風日記」(http://kics.jugem.jp/)という女流棋士のブログもその一つである。
 里見香奈初段、室田伊緒一級、井道千尋一級によるブログなのだが、棋力でいうと、天才里見、秀才室田、凡人井道となる(女流棋士なのでそれ相当の棋力はあるが)。
 このブログだが、めきめきと頭角を現わす里見と棋力が伸びずに苦しむ井道の差が際だってきている。私も諸事に才能が欠けているので、井道の苦労がよくわかる。
 また、のびのびとしたこだわりのない里見を見ていると、天才とはこういうもんだと感じる。
 なやんではいけないのである。
 何の悩みもなく、自分のしたいことに没頭できることを才能があるという。
 羽生三冠や渡辺竜王は、自分が何故将棋をやっているのか、などまったく疑問に思ったことがないのではないか。
 ハンディキャップつきのお好み対局で、山崎隆之七段(崎は難しい字)を里見女流初段が破った際に、見ていた井道が涙したそうだが、
http://www.kansai-shogi.com/event/07ff-12.html
同じ凡人としてその涙はよくわかる。

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2007年5月12日 (土)

三間飛車

 先日、子ども名人戦に長崎の小学生が出場していたので、てっきり将棋どころ佐世保の小学生だろうと思っていたら、なんと対馬の小学生。
 ネット将棋で腕を磨いたらしい。IT革命、高速道路、驚きである。

 さて、準決勝二つと決勝を見たのだが、定跡をよく知っていると感心する。大人になるまで本当に定跡をほとんど知らずに将棋を指していた。

 そういうわけなので、初めて石田流三間飛車を見たときは驚いた。私が小学校五年生の時、同じ小学校の四年生のNくんに早石田を指されて完敗した。
 棋書もないので自分で駒を並べて研究した。先手7六歩、後手3四歩、先手7五歩とくる石田流に対して、後手はつぎに5四歩を突くのが対抗策になることを、その後の変化も含めて、なんとか「発明」し、再戦で勝利した。

 石田流への対抗策として5四歩を突くのは、今の定跡ではほとんど選ばれない手である。
 だが、平成十九年五月七日八日に行われた名人戦第三局で、先手郷田九段の三手目7五歩に対して、後手森内名人が5四歩と突いたので、その記憶がよみがえった(ちなみに将棋は相振り飛車へ)。 
 今の私にとって、将棋は決まった手筋・定跡を覚えるものであり、何かを発明するものではない。石田流三間飛車への対策を練っていたあのころは、今と違った楽しみがあった。

 平成十九年五月九日の棋聖戦挑戦者決定戦で先手久保九段を後手渡辺竜王が破った。ゴキゲン中飛車の一戦で、途中までは渡辺竜王が講師をつとめるNHK将棋講座のテキストどおりの進行だった。これ以上は、難解で良し悪しがわからないと書いてあるところからの展開だった。
 本人は、その場で考えながら指したような書きぶり(ブログに)だったが、おそらく研究範囲だったのだろう。企業秘密だろうが、本当にどこまで読めていたのか興味がある。
 また、石田流三間飛車への対抗策を考えたついたときの感動を思うと、将棋を誰よりも楽しんでいるのがプロ棋士なのだと感じる。

補記:勝又清和『最新戦法の話』(浅川書房、2007.4)をやっと手に入れました。勝又六段は棋力はトップクラスというわけではないのですが、説明がわかりやすく、『消えた戦法の謎』(毎日コミュニケーション、1995.12。絶版は惜しい)など好著を残しています。
 こういう人がいるうちは、こういう本が出るうちは、将棋界もまだまだやれると思います。

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2007年4月18日 (水)

NHK将棋テキスト、その他

 三月末のことになるが、2007年度NHK将棋講座テキスト四月号を購入。購入の理由は、渡辺竜王が講座を担当しているから。内容はやや上級者向き。中井女流六段が担当した前期が初級者向けだったので、入れ替わり。
 NHKの講座テキストの購入は、藤井猛九段が担当した藤井システムの講座いらいなので、もう六七年ぶり。
 池袋東武の旭屋に行って驚いたのが、テキストの数。囲碁が平積みで二十冊以上置いてあるのに、将棋は棚に二冊入っているだけ。地元の中型書店でも、囲碁は十冊ほどあるのに、将棋は二冊だけ。
 なんだこれは。将棋テキストが売れて、たまたま在庫がないのだと思いたいが……。囲碁に比べて、将棋は雑誌が多いので、ファンの嗜好が分散していると思いたいが……。
 いや、将棋は危機なのだろう。

 NHKの将棋講座テキストといえば、小学校四年生のときに、将棋部の先輩から、たしか青野現九段の棒銀戦法を借りて、読んだのが思い出。先輩のお宅までうかがい、NHKのテキスト数冊をうやうやしくうけとって、持って帰ったのが、今となっては懐かしい。
 下手の棒銀上手が困るというように、棒銀は強力な戦法だったが、駒の損得より攻撃を重視する将棋観が染みついてしまった点で、最初に覚えた戦法としてはよくなかったかもしれない。

 息子がそろそろ四歳になるのと、私が将棋が趣味なので、将棋の盤と駒を買ってきて、教えたらと、母や妻にいわれるのだが、乗り気がしない。
 自分の趣味は趣味として、息子にすすめたいとは思わない。将棋は好きだが、将棋が好きなせいで、人生は損をしている。損をしてまでやりたいか自分で判断できるころまで、教えなくてよいと思っている。

 女流棋士会の分裂騒動のさいに、棋士会が残留工作につかったアメが、NHK講座などの仕事の紹介だという。
 たしかに、前期の講座は独立派のリーダー中井女流六段が担当し、今期の聞き手の石橋女流四段も独立派。テキストみると、途中脱落したと聞くが、矢内女流名人も当初は独立派である。
 残留派では、斎田倉敷藤花が別冊の担当をしている。観戦記の二人は、独立派、残留派どっち。
 これが、ガラっと残留派で占められてしまうのかと思うと、残留派へのアメはそうとう甘みのあるものだといえよう。

 ちょっと話しはそれるが、今回の独立騒動はいまの女流棋戦のスポンサーが話しをまとめるべきだった。分裂して、女流棋士へのイメージが低下すれば、棋戦の価値も下がって、結果としてスポンサーが損をする。
 落語協会から円生が独立しようとしたときは、席亭が反対したのでダメになった。スポンサーが後押しする。あるいは反対する。そのどちらかで決まったはずである。

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2007年2月16日 (金)

戦場の霧

 将棋は模擬戦争として、戦国武将たちに愛好されたらしいが、将棋が強くなったとしても、現実の戦争に強くなるとは思えない。
 将棋はすべての情報が素通しになっている。現実の戦いでは、敵の戦力や配置、そして行動は不明であることが多い。情報はつねに不確実で、「戦場の霧」=「戦場における不確実性」との戦いが戦争のすべてである。
 軍人将棋は相手の駒がなにかわからない。ボードシミュレーションゲームはさいころが使われる。コンピュータでシミュレーションゲームができるようになって、戦場の霧がより再現できるようになった。
 とはいえ、将棋の敵の駒の正体がなにかわからなくなっていたり、駒同士の戦いをさいころを振って決めるのであれば、将棋はここまで普及しなかっただろう。戦場の霧を排除したことは将棋の欠点ではない。すべてがお見通しになっているからこそ、将棋は純粋な論理ゲームとして美しい。

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2006年11月19日 (日)

アドバンスト将棋

 自宅でネット対戦するプロ棋戦ができるらしい(http://d.hatena.ne.jp/mozuyama/20061118)。
 渡辺竜王はブログで、

基本的には自宅からということでしたが「不正をやろうと思えばできる」環境で指すことが嫌なので誰かに監視してもらったほうが安心してやれます。長手数の詰みで鮮やかに勝ったのに疑われてはたまりませんので。

と、対局中不正ができないような監視するしくみにしてくれと述べている(http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/bc850a62c2a9e66ea4e5bdb627b9b70b)。

 私としては逆転の発想で、友人を集めて検討し放題、パソコン使ってデータベース検索し放題、詰め調べ放題の将棋にしてみたら面白いと思う。

 プロの倫理観とは相容れないのだろうけど、そういったものを使えば、さらにどのくらい強くなれるのか興味がある(プロでは影響が小さく、棋力が低いほど有用なのだろう)。
 コンピューターの補助利用したチェスはアドバンストチェスとして知られているが、将棋でもためしにやってみられないものか(今回の大和証券杯は公式戦なので無理だろうが)。

 通常の対局が試験をうけるようなものなら、そういったアドバンスト将棋は自由研究のようなもの。最善の棋理をもとめるのが、プロ棋士の使命なら、アドバンスト将棋も悪くないのでは。

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2006年11月18日 (土)

ボナンザ対渡辺竜王

 将棋は、来年三月にボナンザと渡辺竜王が対決。竜王は「もちろん負けるとは思っていない」言い切っていた(http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20061117i212.htm)。

 2006.11.18に開かれたトップアマとボナンザの対局で、アマ側が勝ったように(http://d.hatena.ne.jp/mozuyama/20061118)、渡辺竜王ほどでなくても、まだプロが負けるわけがない。

 なぜ、渡辺竜王なのかという意見が出ていたが(同じく、勝手に将棋トピックス、http://d.hatena.ne.jp/mozuyama/20061118)、根拠はある。

 べつに今負けなくてよいなら、日本将棋連盟の手兵のうち、奨励会員を使ってすむ話である。

 問題は、いずれはコンピューター将棋がプロ棋士を凌駕するということである。
 
 コンピューターがプロ棋士に勝ったとなると、将棋の人気はがた落ちで、日本将棋連盟に与える打撃はかなりのものである。日本将棋連盟にとって、プロ棋士の敗戦はできるだけ先送りしなくてはならない。

 今回は、ネット棋戦開設の記念対局らしいが、コンピューターとプロ棋士の対局は、こんご何年おきかに、定期的に行われるはずである(実力に差があるうちはいくら戦わせても心配なく、対局料だけ入って、損にならないのだから、連盟は、価値が下がらない程度に、頻繁に対局を組んでもおかしくない)。
 
 そのさい、定点観測の意義から同じ棋士が登用されるだろうから、緒戦でも強い棋士を対戦させておくにこしたことがない。

 それにタイトル保持者を対局させる方が、対局料も多額に設定できる。

 じゃあ、森内名人、羽生三冠、佐藤棋聖のトッププロ三強のうち、だれかでいいだろうと思うかもしれないが、この三人は年齢が、森内(36)、羽生(36)、佐藤(37)なので、棋力は加齢と反比例していく可能性が高い。

 渡辺竜王(22)はこれから伸び盛り。選ばれたのは当然だろう。

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2006年10月 3日 (火)

今さらながらBonanza

 今さらながらBonanzaをインストールしてみた。
 知らない人のために説明するとBonanzaとはフリーの将棋ソフトである。
 http://www.geocities.jp/bonanza_shogi/
のページからダウンロードできる。
 フリーウェアとはいいながら、2006年の第16回世界コンピューター将棋選手権で優勝した実力のあるソフトである。
 少し前のv1.0で将棋クラブ24(ネット道場)で2400のレートをもっていたというが、将棋クラブ24をやったことがないので、どのくらいの強さかわからない。将棋クラブ24のページを少しのぞいたところ、1900でアマ三段ほどあるらしいからアマ五段ぐらいか。

 実際にダウンロードして、指したところ、やっぱり強い。
 今まで十回に一回ぐらいしか勝てなかった東大将棋V5を持ち出して、対戦させてみたが、Bonanzaが四連勝した。
 今までの将棋ソフトは、冒険しない、堅実な手ばかり指していたが、Bonanzaは積極的である。それでいいのかと驚くような手を指して、実際に形勢を良くしてしまう。
 見た目は地味だが、強力なこのソフト。知らない人は一度試してみるとよい。

補記:対戦三局目に、角がわりの将棋で一度だけ勝ちました!。意外と勝てるかと思ったものの、その後はいくらやってもまったく歯が立たない。棋譜残しておけばよかったと後悔しています。

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2006年6月20日 (火)

集中力

 BIGGLOBEストリーム(http://broadband.biglobe.ne.jp/sitemap/index_shougi.html)に将棋ニュースプラスという番組がある。
 五月十九日から始まっており、週一回の割合で、さまざまな内容を流している。みるべきものは「レースクイーンに将棋を教えよう!」(苦笑)でも、「女流棋士リレー紹介」でもなく、「ザ・加藤一二三伝説」に尽きる。
 加藤一二三九段は、華々しい戦績だけでなく、数々の奇行(失礼!)で有名で、Wikipediaに「加藤一二三伝説」が編まれているぐらいである。
 その「加藤一二三伝説」について、その真偽と、どうしてそのような行動をとったかを本人!に取材したのが、「ザ・加藤一二三伝説」である。
 数々の伝説はネット検索にでもかけてもらうとして(加藤一二三伝説とかければ数々出ます)、「ザ・加藤一二三伝説」からひとつ話題をとりあげる。
 五月十九日号の「ザ・加藤一二三伝説」では、加藤九段が対局中に、対局場の旅館で流れている人工の滝をとめさせた話がとりあげられていた。なお、加藤九段によれば羽生善治四冠も二度ほど滝を止めさせたことがあるらしい。
 止めた理由は音が気になるからとまっとうなものである。海辺の旅館などに行くと、最初は潮騒の音で眠れるかと不安になるが、実際にはすぐに慣れてしまう。おそらく滝も天然のものならましだったろうが、人工の滝はどこか耳障りなのだろう。

 そこで思い出したのが、前期(第64期)A級順位戦最終局の三浦弘行八段対佐藤康光棋聖の対局である。三浦九段は勝てば自力残留だったが、もし敗れれば森下卓九段が羽生善治四冠に負けない限り、A級から降格となってしまうのだった。なんと、三浦対佐藤戦と森下対羽生戦は同じ部屋で行われた。私はそれをBS放送で観ていた。
 先に終わったのが森下対羽生戦で、その模様は天井カメラと部屋のカメラから、わかったのだが、三浦九段は森下対羽生戦が終わったにもかかわらず、そちらに一瞥もくれない。ひたすら、自分の局面に集中している。
 普通の人だったら、首を振ってどちらが勝ったか確認ぐらいするだろう。
 三浦九段には、ファンよりアンチファンの方がやや多いようだが、それも見せ方で、だいぶん変わるのではないか。少なくとも、自局に集中しきった三浦九段の姿は、プロ棋士として魅力があったと思う。
 
 三浦九段の件でまっさきに思い出したのは、Kさんのことだった。小学五年生と六年生で同じクラスだったKさんという女の子がいた。Kさんは黒目がおおきくぱっちりした美人で、なおかつ利発だった。私の初恋の相手である。テストをうけているときに、廊下で大きな物音がすると、小学生のことだから、みんな手を止めてそちらを見るのだが、Kさんはまったく気にすることなく、問題用紙だけを見ているのだった。
 小学生のことなので、Kさんの方が私より若干背が高かったが、そういったところも大人っぽくって、Kさんの魅力だった。

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