渡辺明竜王がブログを開設している。更新は、二日制対局の日などを除くとほぼ毎日なされる。トラックバックは元よりコメントも受けつけており、ちょくちょくコメントに返事をしている。
これは極めて異例のことである。将棋の位で竜王といっても大多数の人にはピンとこないだろうが、実は名人位よりも竜王位の方が上位にある。これは、毎日新聞より読売新聞が賞金を多く出しているためで、歴史から見ると将棋における名人の重みは減じていない。しかし、竜王こそがいま将棋の最高の位であることは、意識しておかねばならないだろう。
渡辺明竜王は、前期に森内俊之現名人から竜王を奪取して現竜王になった。さいきんは最初の防衛戦を木村一基七段と行っており、昨日四連勝で見事に防衛を果たした。インターネットで棋譜を追っていたが、第一戦では相手の研究手をはねかえし、第四戦では受けの木村と呼ばれる挑戦者を攻め潰しと、渡辺竜王の強さが目立った。
渡辺明竜王は、中学生でプロ棋士になっている。この中学生棋士というのは過去に加藤一二三、谷川浩司、羽生善治しかおらず、しかもいずれも名人になっている。なお、全棋士に竜王位につく機会がある竜王戦と違って、名人戦は順位戦といわれるグレード別のリーグ戦を抜けていかねばならず、その年最強の棋士でも、A級に属していないと名人位へ挑戦できない。渡辺明竜王はC1なので、それを抜けて、さらにB2、B1を突破してA級に属さないと名人位の可能性はない。
くどくなったが、将棋界における大変偉い人がブログを開いているということを言いたいのである。
自戦記もブログに公開してあるのだが、差し手の疑問がコメントにつけられると、なんといちいち応答している。竜王戦に関しては、新聞や雑誌の兼ね合いもあるので、それが出そろったところで、載っていない手については解説しますと第一戦のあとに告知していた。ところが、それにもかかわらず、第三戦のあとに手の質問をするフウケ者が現れ、竜王はなんとコメントするか気になったのだが、こともなげに答えてやっている。
渡辺明竜王は、某大手掲示板でのあだ名が「魔太郎」である(今は竜王とかけて「魔王」もある)。藤子不二雄Aの『魔太郎が来る!』の「魔太郎」に似ているからだろう。実を言うと、ブログを読むまでは、渡辺明竜王とは、非常に酷薄で、マントにワイングラスなんかを持って、「羽生世代ももう終りですよ。フッフッフ」なんて言っているのではないかと思っていた。
実際は、私より一世代若い二十二歳にもかかわらず、一歳三ヶ月になる男の子を持つ家庭人である。私も、二歳六ヶ月と六ヶ月の子どもを持つので、渡辺明竜王には親近感を持っている。よく知っている方を応援したくなるのは世の常で、私は渡辺明竜王を応援している。最初はちょっと怖かった顔も、最近は恰好よいと感じている(妻はコボちゃんとか言っていたが)。
『将棋「次の一手」読本』(宝島社、平成17・8)でのインタビューを読んでもわかるのだが、将棋を今後広めるために渡辺明竜王がいろいろと気をつかっていることがわかる。ブログもその一環なのだろう。
渡辺明竜王のブログはRSSリーダーに入れて更新があるといつも見ているのだが、気になることが一つある。私も将棋ファンなのでわかるのだが、将棋ファンとは屈折した人間が多い。嘘だと思う人は、将棋道場に行ってみるとよい。ブログへのコメントにも、たまには変なのがまじっていて、そういったものへの対応で渡辺明竜王が疲弊してしまうのではないかと心配している。
渡辺明竜王ぐらい偉くなれば、トラックバックだけでも十分だと思うのだが、その一方で竜王のコメントも見たい。 複数の棋戦を制するようになって、その防衛などに忙しくなれば、更新もむずかしくなるだろうし、ブログがどう続いていくのか、興味がある。
補記、「タイトル」という語を使わないでみたが、書きづらかった。竜王のブログにトラックバックをしてみました。少しドキドキ。
補記、2008年9月8日をもって、渡辺竜王のブログはコメントを停止。ID制になってから、落ち着いたかと思っていたがそうでもなかった様子。私自身、竜王のブログは毎日読んでいたものの、コメント欄はまったく見なくなっていました。竜王の過去の日記のコメントを読み返してみました。不遜・不敬ななコメントは削除されて、普通のコメントばかり残っていたせいもあるのですが、手の意味を聞く質問やここでああすればという意見が多かったです。それにきちんと対応していたのが、負担だったような印象をうけました。
なにはともあれ、名人戦騒動の荒らしもとい嵐も乗り越え、この記事を書いてから二年半以上、竜王よく頑張ったよと思います。まだ、渡辺「竜王」って書けるのもファンとしてはいいですね。いろいろ重しがとれたと思うので竜王にはこれからも健筆を期待します。(2008.10.03)
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