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2007年3月29日 (木)

凡例の大事

 中野三敏『写楽』(中公新書、2007.2)は、『江戸方角分』の翻字で中野が「写楽斉」としたことに、大沢まことが「写楽斎」と翻字すべきだと反論を述べたことを記す(190頁)。
 昨日、述べたように、号は「斉」ではなく「斎」で翻字すべきである。「伊藤一刀斉」や「宮本無二斉」はおかしい。号が「斉」で書かれていれば、私でも奇異に感じる。
 中野は、『江戸方角分』は原文がそうなっているのだと反論した(192頁)。

 『江戸方角分』翻刻(東京風俗会、昭和52・7)の凡例を確認すると、「翻印に当っては、つとめて原本に忠実になるように心がけた。」とある。なんでも原文どおりという翻刻方針を私は好きではないのだが、そういう選択もたしかにある。凡例で断わってあるなら、「写楽斉」であっても、非難の対象にはあたらない。

 凡例は重要である。調べ物の際は、急いでいるので、読み飛ばしそうになるが、確認しておかないと大変なことになる。

 岩波古典大系『浮世草子集』は、読者の便をはかって、仮名に宛漢字を行い、もとの字は〔〕でふりがなにしている。なお、難しい字には()でふりがながつけてある。
 おかげで読みやすくなったのだが、なにせ昭和41年の出版なので、今ではなおす必要がない字まで漢字になっている。

 「とありける故」の「故〔ゆへ〕」、「此時に至って已に」の「已〔すで〕」など、枚挙にいとまがない。

 かつて、ある浮世草子作者の用字法を調べたことがあった。『浮世草子集』の翻刻方針に気づかずに、資料を引き写し、あとから気づいて、調べ直しとなった。

補記:中野三敏『写楽』のいうとおり、阿波の能役者斎藤十郎兵衛で写楽は決まりでしょう。

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