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2007年2月24日 (土)

にくめない高師直

 『仮名手本忠臣蔵』の高師直は、大名の品格を失わずに演じる必要があるらしいが、実際に演じるのは大変だろう。そもそも塩冶判官の妻に懸想して、とった行動が付け文というのが、悪人のとる行動ではない。武力で塩冶判官を滅ぼし、力ずくで奪い取るのが正しい悪人である。
 顔世御前に断わられて、腹立ち紛れに塩冶判官にいやみをいい続けるのも、柄が小さい。岡惚れがばれて、ふてくされて文句をいう中学生かといいたくなる。
 こんな具合なので、せいぜい意地悪なじいさんであって、悪人とはいいがたい。
 むしろ、怒って斬りかかった塩冶判官も、小学生同士の喧嘩ではないのだから、もう少し我慢してやりすごせばよかった。なお、正しい対処方法は、山本博文『学校で習わない江戸時代』(新潮文庫、2007.1)に書いてある。
 そういうわけで、高師直を私は憎めない。刃傷の場以降、討ち入りの場面まで高師直が出てこないのは残念である。

 なお、二月の歌舞伎座で『仮名手本忠臣蔵』の通し狂言を見た。高師直を演じた中村富十郎の色魔ぶりに期待したのだが、エロじじいよりもいやみなじいさんといった演技。終演後、着物のおばさん客が「富十郎さんといえば、どうしても(七十を過ぎて)お子さんを(ふたり)作ったことが、頭にあるでしょ。みているとそれでいっぱいになっちゃって」などと語っていたので、意識してエロは抑えたのかもしれない。

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