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2006年10月 6日 (金)

個人的な意見ですが

 すべての意見は主観をまぬがれない。だから、「個人的な意見ですが」と冒頭につけて話すのは意味がない。
 もし、「個人的な意見ですが」という場面があるなら、発話者が公人であり、発言が当然拠るべき公的な立場から離れた内容を述べるときである。

 だが、最近になってその判断が十分でないことがわかった。
 『ユリイカ』2006.9号は「理想の教科書」特集である。特集の筆頭は石原千秋と斎藤美奈子の対談であり、とても面白い。
 そのなかで、石原が「個人的な意見ですが」について、見解を述べている。

石原 もうひとつは、大学一年生あたりが演習で発表したり議論で意見を言う時によく口にするフレイズですが、「これは私の考えなんですけど」という前置きをして意見を言うということに表れている問題です。
斎藤 「個人的な意見ですが」と断るとか、大人もよく言いますね。
石原 そうそう。僕は最初はこのフレイズの意味がわからなくて「他の人じゃなくて君の意見が聞きたいから質問したんじゃないか」なんて言っていたのですが、それは僕の大きな勘違いでした。つまり、大学一年生は高校までの国語教育で「教室では先生の気に入る答えをしなければいけない」と教え込まれているんですよ。だから彼らが言うのは「先生が気に入る答えじゃないかもしれないけど、言ってもいいですか?」というエクスキューズだったわけです。このことがごく最近になってわかったわけです。
斎藤 ああ。そこには「私個人の意見ですから無視していいです」という卑屈なメッセージが含まれている。(48頁)

私はかつて自分の教室で、「これは私の考えなんですけど」あるいは「個人的な意見ですが」といった弁明ではじまる文句を聞いたことがない。
 これは私の教室が、教師の顔色を窺わなくてよい、自由な発言が可能な場だったためであろう。

……というのは、たぶん妄想で、「個人的な意見」すら言えない圧迫感のある場だからではないか、と危惧している。

  **都合により、明日から十一日まで更新を停止します。**

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