« プロフィールの長さ | トップページ | 近距離のタクシー利用 »

2006年9月13日 (水)

オシムブームの真実

 八月下旬より、スポーツ雑誌はオシムブームである。『サッカーマガジン』や『サッカーダイジェスト』のような専門誌が扱うのはともかく、『Number』や『Sportiva』や『Yeah!』までオシム特集を組んだのには驚いた。
 これはセリエAの開幕が遅れて、欧州特集が組めなかっただけではない。ある構造の転換が隠されている。

 W杯ドイツ大会までは、いわゆる海外組を重視するジーコが日本代表の指揮をとっていた。これは、外国のリーグや欧州CLを売り物にするメディアと広告代理店が糸を引いている。
 どんなときでも海外組をジーコが使うことは、Jリーグに対して、海外のリーグが優越することを伝える格好の材料である。また、使われない国内組に、海外移籍を決意させる要素となる。
 ジーコが代表選手を固定したことも、メディアや広告代理店には有利である。その選手を露出させて、スターに祭り上げることは、海外リーグの放送のためだけでなく、CM契約などにも有利である。

 しかし、この体制は転換を強いられていた。ひとつは、海外リーグで活躍した選手が少ないためである。海外で活躍したもっとも著名な選手である中田英寿にしても、1998・1999年のペルージャ、2000・2001年のローマまでは調子がよかったが、その後パルマではいまひとつ活躍できず。2003年のボローニャ期限つき移籍以降、フィオレンティーナ、ボルトンと徐々に居場所を失っていった。
 稲本、中村、柳沢、高原、ここ三年のうちだれが十分な活躍ができたのだろうか。レギュラーをとれた選手のリーグは今ひとつマイナーである。中村はスコットランドリーグ。中田浩二はスイス。松井大輔のみフランスリーグと大国だが、おととしは二部、昨年やっと一部でプレーしている。
 BSでヤンキースの松井を観る。マリナーズのイチローを観る。といった状況にほど遠い。
 スカパー!、WOWOWなどが、「WorldSoccerこそすばらしい」とここ十年の間、売り込んだ結果、日本人選手がいようがいまいが、バルセロナやアーセナルの試合を楽しみにする、海外サッカー専のサッカーファンが、日本にある程度根付いたのはたしかである。
 しかし、海外リーグの試合の視聴率が今後伸びていく保証はなく、先に述べた状況を考えると、見通しは暗い。
 2006年のW杯で、日本代表が一次リーグ敗退したことも逆風を吹かせている。

 だが、W杯の前から、すでにメディアはその後の戦略を立てていた。
 W杯後のメディアの戦略をひと言でいうと「Jリーグ重視」である。

 2005年4月より、スカパー!はもっているサッカーコラムの執筆者に木村元彦を入れている。木村元彦は『オシムの言葉』(集英社インターナショナル、2005.12)の執筆者であり、もともと木村はオシムと親しい。

 いや、『オシムの言葉』もメディアが戦略として、木村元彦に書かせたものであり、コラムの執筆者への抱え込みもその一環であろう。(逆に、『世界サッカー紀行』の著書がある海外通でありながら、浦和の外国人は五人発言などでJサポに嫌われている後藤健生の「蹴り捨て御免」にかわって、海江田哲朗のコラムがはじまったこととも平仄が合う)。
 もともとオシムの発言は「語録」の名称で知られている。『オシムの言葉』は『毛沢東語録』のような教典の役割を果たす目的で生まれた。そして、現在に至るまで、『オシムの言葉』はその効果をあげている。

 言うまでもなくオシムはJリーグのジェフ千葉の監督であった。Jリーグにいる世界的な名将を使わない手はない。使えばJリーグに国民の目がいく。

 オシム自身も極端なまでに国内組重視の代表選手起用である。そして、起用選手はW杯ドイツ大会ジーコと大きく異なる。

 国内組を重視しながら、さらに今まで違う選手を選考するのは、国民の目をJリーグにもっとむけさせるためである。新しいスターを増やそうとしているのだ。オシムのJ重視は、メディアの方針にあっている。

 メディアの方針がはっきりしたのはJリーグの放送権のゆくえである。

サッカーのJリーグは15日、理事会を開き、CSのスカイパーフェクTV(スカパー)と、J1、J2全試合を生中継する権利を与える放映権契約を結ぶことを決めた。

 契約期間は2007年から5年間。これにより、Jリーグ放映の軸が、これまでのNHKからスカパーへと移行することになる。地上波、放送衛星(BS)はNHKとTBSが引き続き放映権を持ち、スカパーと合わせた放映権料は年間約50億円となる。
(2006.08.15。読売新聞)

 五年契約とは先物取引である。Jリーグに人気が出れば(そして契約者数が増えれば)、安い買いものだったことになる。スカパー!は、CLと海外リーグ、そしてJリーグの三本の柱を立てようとしている。スカパー!にとってはなにがなんでも、Jリーグが注目される必要がある。

 代表とJリーグを結びつけることで、代表人気をJリーグ人気に転換させるために、オシムは適任であり、メディアもオシムを大いに持ち上げているのである。

 では、”独裁者”川渕三郎は、どうしているのか。さすがの”独裁者”とはいえ、この方向転換にいいなりになるしかないのである。
 週刊ポストの徹底追究によれば(http://kawabuchi-kikaku.com/ を見てください)

 日本サッカー協会から講演料として1講演100万円を川渕三郎の秘書(日本サッカー協会所属)を通じて、川渕企画に振り込ませていた事実に対して文部科学省が捜査の手をいれる。

 3000万円の講演の金銭授授に関して、やはり、文部科学省が調査をしている。

などと、文部科学省がプレッシャーをかけている。
 一見、文部科学省など関係なさそうだが、実は大ありである。
 文部科学省は、toto(スポーツ振興くじ)の勧進元である(独立行政法人日本スポーツ振興センターがtotoを実施しているが、これは文部科学省の所管である)。
 totoが凋落傾向にあるのは有名なことで、
 Wikipedia(2006.9.5)では、

こういった努力にもかかわらず、2005年度の売り上げが過去最低を更新し約149億円と採算ラインの421億円を大幅に割り込んでおり、累積赤字も2005年度末に約224億円と2004年度末の約154億円から増えている。

とされている。文部科学省はtotoをなんとかしたい。そのためにはJリーグにもっと目を向けさせたい。日本代表を利用して、Jリーグを活性化させる、それが文部科学省の狙いである。

 川渕三郎はのど元に短刀を押しつけられている。今後、オシム体制の日本代表がうまくいかず、Jリーグに光が当らず、totoへのてこ入れがきかなければ、文部科学省は川渕三郎をやめさせ、その後釜に天下り官僚を据えようとするかもしれない。

 川渕三郎は『オシムの言葉』の著者木村元彦との対談を拒んでいる(スカパー!コラム「地球を一蹴」第29・30・31に詳細。http://mobile-emu.goo.ne.jp/cgi-bin/imode2.cgi?SY=2&MD=2&FM=1&TP=http%3A%2F%2Fmobile.skyperfectv.co.jp%2Fimode%2Fsport%2Fsoccer%2Fcolumn%2Findex.html)。
 『オシムの言葉』に感動したのなら、木村に会うはずである。本当はオシムが嫌いなのだろう。例の「失言」も技術委員会をはじめ、圧力の元となっているもろもろへの嫌がらせである。
 もっとも、代表が勝つことは、川渕にもそれ以外の者にも、すべてよい結果をもたらす。その点で利害は一致している。2010年W杯のために、川渕は呉越同舟をいとわない。

補記:裏づけのなーんにもない戯文です。私の記事の「五輪サッカーの放送」(2005.7.18)、「西野朗の名誉回復」(2005.12.27)と同様のメディア陰謀説です。こういう妄想を書くのは楽しいもんです。
 個人的には、海外リーグよりJの方が好きでしたのでいい傾向です。ケーブルテレビに入っているので、今後も視聴は安泰です。
 メディアにのせられているわけではないですが、オシム監督になって、日本代表の試合をとても熱心に見ています。雑誌も買っています。
 ただ、前々から応援していたジェフのホーム六連敗はガックリ。臨海のころは臨海不敗神話とか呼ばれていたのに……。
 

|

« プロフィールの長さ | トップページ | 近距離のタクシー利用 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103175/11876930

この記事へのトラックバック一覧です: オシムブームの真実:

« プロフィールの長さ | トップページ | 近距離のタクシー利用 »