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2006年9月23日 (土)

知っているとこえられない

 芝居に関わっていたころ、演出家とはどうしてこうわがままな人が多いのかと呆れていた。いろいろわがままな要求があると、あんなスタッフワークのことが何もわかっていない奴が無茶いいやがってとぶつくさ私は言っていたものである。だが、私の上に立つプロの舞台監督さんはもくもくとそれをこなすのだった。
 さいきん、ある仕組みがわかった。

閃きの純度を高くキープする。自分でやるとなると自分でできるレベルまで閃きのレベルを落さなければならなかったりしますから。発注したり、アシスタントを養成したりしていると、自分ではできない閃きをあきらめなくてもよい。あきらめないで純度の高いものをひろえるチャンスを手に入れられるのです。
(村上隆『芸術起業論』、幻冬舎、2006.6。101頁)

演出家はスタッフワークのことをわかっていなくてよいのである。純粋に芝居としてどれがいいかを要求すればよい。

 思い出したのは、知り合いの学生劇団のOさんのこと。Oさんは、役者もできたし、舞台監督もできたし、脚本も書けたし、演出家もできた。非常に多才だった。また、Oさんの劇団でとても厚い信望を得ていた。
 だが、学生劇団仲間のわれわれにとって、Oさんは何をやっても二流の人だった。Oさんについて、話が出るときは、かならず「ダメだね」という文句が入った。どうして、Oさんが一流になれなかったのか。
 いまとなって、Oさんがスタッフワークのことも、役者のことも知りすぎていて、それぞれに対して一線を越えた「狂気」を要求できなかったからではないかと推測している。

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