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2006年9月10日 (日)

小説での実名

 現代小説はほとんど読まないのだが、内田康夫『王将たちの謝肉祭』(幻冬舎文庫、2006.8。初出は廣済堂出版、1986.8)は、買ってしまった。推理小説の人気作家の作品だけあって、一気に読めた。もとより推理小説としての構成がすぐれている。升田幸三を柾田圭三、米長邦雄を吉永春雄、大山康晴を大岩泰明、中原誠を中宮真人などと、実際の人物をモデルにした仮想小説なのだが、それぞれの将棋指しの魅力的エピソードをうまく消化している。下手な人がやったらエピソードにひきずり倒されかねない。

 1986年の小説だが、バブルの状況は変わっても、棋戦の移籍問題やアマチュアへのインフレ段位の免状発行など、将棋界の構造とその問題は、今も変わらない。

 今井香子女流棋士は、おそらく林葉直子をモデルにしているのだろうが、いまとなってみると千葉涼子(旧姓碓井)女流王将の方が近いかもしれない。

 さて、この小説の中では、木村義雄、阪田三吉など古い棋士は実名だが、大山以降の棋士はほぼ仮名である。例外的に、唯一実名で登場するのが、羽生善治。十五歳の少年、四段として、本文でも「天才羽生」と呼ばれているが(羽生の1985.12.18に中学生で四段)、実に初々しい書かれ方。羽生三冠が知ってか知らずか、今のところクレームはついていないようである(クレームをつけたいのは、真鍋一雄として登場する真部一男だろう。さんざんな書かれよう)。
 いちばん新しい人が実名で、他が仮名というのも面白い。

 荒俣宏の『帝都物語』は三島由紀夫などが出てくる架空歴史小説だが、現実のどの段階まで実名を小説に用いてよいのか。時間が近ければ、あるいは生きていればだめなのか、出版社に秘密の規則でもあるのだろうか、などと考えていると興味が尽きない。

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