« 絵を描く技術 | トップページ | 吾が仏尊し »

2006年5月30日 (火)

フォントの話

 高校二年生に教える現代国語の教材で、いかに人間が手書きの文字にその人間性を見いだしているかという文章を扱った(だれの文章だったか具体的に思い出せない)。
 筆者は「手書き=記号のみならず人間性をともなう」「活字=記号のみ」の対比で論理で展開していた。授業では、相田みつをの文字を書き真似て、説明の補強とした。
 とはいえ最後には、筆者の言うようにそう簡単に二項対立化はできないと述べ、その教材への解説プリントに、いろいろな印刷のフォントを載せてみた。
 文字は記号としての役割さえはたせば、最低限の役割をはたすのだが、それでも文字に人間性を求める人の心は、さまざまなフォントを作り出した。
 私の知っている人でも、手紙はかならず正楷書体をつかう人がいる。
 先日(2006.5.14)「殿・様 その二」にmasapfさんから、

現在のパソコンでは、なかなか気に入ったフォントに巡り会えないと思いませんか?
自分で気に入った字体を書ければそれが一番なんですけれど。

というコメントをもらった。
 私は、実を申せば、明朝体が好きである。とはいえ、世の人は、明朝体の活字は味気ないと思っている人が多いと感じており、この嗜好は人に言わない方がよいと思っていた。
 ところが、最近読んだ鈴木敏夫『映画道楽』(ぴあ、2005.4)にタイトルロゴの書体の話があって(126-128頁)、それに共感できた。
 内容をところどころ引用すると、

 タイトルでもう一つ、僕がいつも言うのは、タイトルロゴです。ロゴの書体を明朝体かゴシック体にする。これが大基本です。最近では、書き文字もありますけど。(中略)自分が編集者として培ってきた仕事で、読みやすいのは明朝体とゴシック体だと思うんです。(中略)『魔女の宅急便』『おもひでぽろぽろ』も、基本はタイトルロゴが明朝なんです。こういう書体を使うのは、「これはお子様向け作品ではありませんよ」というアピールでもあります。(中略)また、明朝やゴシックにすると高級感が出るんですね。どこかで「安っぽい作品じゃないんだ」と言いたいんです。

鈴木敏夫が続けて述べているように、『もののけ姫』が宮崎駿の、『ハウルの動く城』が鈴木敏夫の書き文字で、それ以外はジブリの映画のタイトルロゴは、明朝体かゴシック体なのである。

 かつては親密な手紙もワープロで書いていたことを、2005.10.26の「手紙は手書きで」で述べた。私が明朝体が好きなのは、それが本と一緒だからである。ワープロが出たとき自分が書いたものが、本と同じ活字になることに大喜びした。私は活字信仰のある最後の世代である。なんどでもいう、私は明朝体が好きなのである。

補記:海外からのスパムコメントがなぜかつくのでコメント受付を停止しました。
 

|

« 絵を描く技術 | トップページ | 吾が仏尊し »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103175/10301736

この記事へのトラックバック一覧です: フォントの話:

« 絵を描く技術 | トップページ | 吾が仏尊し »