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2006年3月10日 (金)

”Half-Blood Prince”名義考 その三(ネタバレあり)

               **ご注意**
 この回にはきわめて重大なネタバレがあります。未読の方は読まないように気をつけてください。

 さて、前置きが長くなったが、やっと"Harry Potter and Half-Blood Prince"の話に入る。その一、その二で述べたように、「混血児」を蔑称だとうけとる人間がいるからこそ、"Half-Blood Prince"は「混血の王子」にしなければならなかったと思う。

 ”Half-Blood Prince”は、ハリーが見つけた薬草学の本の持ち主がした署名である。本の持ち主はセブルス・スネイプである。スネイプが「純血」ではなく、魔法使いの母親Eileen PrinceとマグルTobias Snapeの父親との「混血」の息子(王子)であったので、”Half-Blood Prince”なのである。

 ハリーポッターの世界では、純血主義者(純血を優秀だと思う)が「混血」を見下す場面が多々みられる。その世界では、現実の英国と同じように、Half-Bloodというのは差別的な表現である。

 しかし、軽蔑を受けとめつつ自らの出自に誇りを込めた表現が ”Half-Blood Prince”なのではあるまいか。また、「泥棒貴族」や「怪盗紳士」といった不釣り合いな言葉がつながって印象が強まっている言葉である。だからこそ、「混血の王子」と訳すべきだと思うのである。

 私は英語力不足から、言葉の感覚がうまくつかむ自信がなく、また本文中のスネイプの心情も十分に読み取れてはいないかもしれない。だが、本文中の”Half-Blood Prince”を日本語での「あいのこ王子(プリンス)」に近い感覚でスネイプが使っていたのではないかと思うのである。

 ハリーポッターの小説世界では、ハリーら「混血」が「純血」の圧力や差別に負けず、それをはねのける姿が描かれている。人種差別の愚かさを伝えているのである。また、実はヴォルデモート卿が「混血」であり、それがヴォルデモート卿の性格や精神に影響を与えており、だからこそあのような!といった、内面に深みのある敵役にしている。

 児童書なので、一番安易な解決策であるカタカナ表記の「ハーフ・ブラッド・プリンス」にしなかったのは賢明である。確かに謎なので、題名は「謎のプリンス」でいいだろう。
 
 しかし、”Half-Blood Prince”は、"Prince”に姓と王子の両方がかかっていて、それが重要な意味を持っている以上、本文では「混血の王子」で通さねば、原作者の意図を曲げることになる。5月17日の邦訳版は予約したが、本文中がもし「謎のプリンス」で押し通されていたら、我慢するつもりはない。手持ちの邦訳版はすべて叩き売って、いかに私の英語力が貧弱といえども、以後英語版しか読まないつもりである。静山社および翻訳者松岡祐子には、適当な態度をとることを切に望む。

補足:まあ杞憂だと思いたいのですが……。

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