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2006年1月 1日 (日)

無礼と残心

 マイラインでKDDIを利用しているのだが、KDDIに委託を受けたエクスポートなる会社から、基本料金がNTTよりも月々600円安くなるので、その手続きをしないかと電話を受けた。パソコンの設定など変更しなくて大丈夫かと繰返し尋ねたが、なにもしなくていいのでと向こうが言うので、じゃあお願いするというと、折り返しさらに委託の会社から電話するという。アソウなるオバサンは一分で電話すると言って電話は切られたが、折り返しの電話がかかってきたのは七分ほど後。
 新しい電話の若い男性が言うには、プロバイダーを含めてKDDIに変更しなければならないとのこと。かつて電話やダイレクトメールをもらっていたので、ああメタルプラスのことだったのねと理解して、じゃあいりませんと言うと、レイコンマ三秒ほどの早業で何も言わずに電話を切られた。
 これもKDDIのマイラインなど利用しているためなので、マイラインを変更する予定である。変更手数料は840円だが、時間と精神衛生にはかえられない。

 2005年12月31日の記事で、大先生(師匠の師匠)の随筆を紹介したが、そのなかに「客を送る」と題した文章があったことをこの無礼な電話で思い出した。その文章では『徒然草』三十二段から、女性が相手を送り出した際にすぐ扉を閉めて掛金をかけるのではなく、相手を送り出したまま妻戸を少し開けて月を眺めていることを、兼好が余韻のある振る舞いとなつかしんだと紹介している。そして、「私は来客が送って出る度に、門の扉の前でいつもこの話を思い出してしまいます。電話がすんで受話器を置く、その時の呼吸にもやや似たところがあるでしょうか。」と結んでいる(筆者と書名を紹介できないのがまことに残念)。
 
 先の無礼な電話で、大先生の本を思い出したのだが、もうひとつ思い当たることがあった。
 私はかつてジュンク堂書店の店員の態度が好ましくないことがあるとこの記事に書いた。そのあと、何度か店員に声をかける機会があって、まあ普通の対応をしてもらったのだが、一度だけあまりいい気がしないことがあった。それがどうしていい気がしないのか、そのとき原因が自分でもはっきりしなかった。しかし、それが何だかわかった。
 ジュンク堂の店員にどこかの棚に案内してもらった際に、なんとなく嫌な態度と思ったときは、店員が身を翻す速度が非常に速かったのである。そのため、つまんない本を探すのに仕事中に呼び止めて悪かったかなぁという気になる。もちろん、ちゃんと案内してくれているわけなので、悪印象はお門違いなのだが、ふるまいに心を残すか、剣道でいうところの残心ひとつで印象が変わってしまうのでは、その店員は損をしている。
 私の接客業の経験といえば、劇場のアルバイトだが、かくいう私も、案内のあとの身のひるがえし方が素早かった気がしてならない。ため息が出るが、後悔は先にたたない。

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