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2006年1月24日 (火)

悪者を決めて

 木村元彦『オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える』(集英社インターナショナル、2005・12)は、いろいろな面でとても印象深い本だった。考えさせるところ、勉強になるところが多いのだが、そのなかで、選手の中で悪者を決めていつもそれを叱ることはしない、とあったのは流石だと思った。
 私も教員だったころは、是非ともそうしたいと思っていたのだが、悪さをする生徒はだいたい決まっていて、なかなか言うことを聞かないものだから、いつの間にか、そういった生徒が悪者になって、授業を引き締めるために見せしめで叱られているということと、変わらなくなっていた。
 しまいには叱られている方は、慣れっこになって効果がなく、怒っている私を見ている他の生徒が居心地の悪い思いをするのでは、馬鹿らしい。

 叱られる側としては、芝居を始めた頃に、いつも叱られる奴になった経験がある。最初に入った学生劇団の舞台監督だったUさんは、立派な人で、それを見込んでその劇団に入ったのだが、舞台作業の直属の部下ということもあるのだが、なにせよく叱られた。私がちょっと遅刻してくると、大声で罵倒されたが、その後遅れてきた人がいてもちっとも怒られないのである。ずいぶんあとになって周りの人から聞いたが、Uさんも私を見せしめに使っていたところもあったという。
 剣道をしていたこともあって体育会気質は慣れているし、仕事を覚えようと熱心だったこともあって、私自身はさほどひどい扱いだとか、つらいとか思ったことはないのだが、最初の公演が終るまでにやめるに私が違いないと、周りの人たちはハラハラしていたらしい。そのころの私の口癖は「チクショウ」だったらしく、いつもそう言いながら作業をしていたそうだ(苦笑)。
 けっきょくUさんの下では一年ほど働き、その後私がその劇団の舞台監督になった。Uさんに対して、わだかまりはまったくないのだが、何年後かにUさんと同席する機会があったときに、周りの人から「今日は喧嘩しないで下さいよ」と言われたことがあった。最初に入った劇団の人たちは、私がUさんを恨んでいると信じて疑わないようだが、それが本当なのか、私自身はまったくわからない。
 

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