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2005年9月26日 (月)

卿をつける場合

 曲亭馬琴が友人小津桂窓に宛てた「天保五年五月十一日」書簡の中で、小津桂窓が著作『月波日記』において「薩摩守平忠度朝臣」を「忠度卿」と記したことに異議を唱えている。三位(さんみ)以上を卿と称すので、正四位下の忠度は朝臣と呼ぶべきという意見である。この馬琴の意見は正しい。

 『広辞苑』第五版では、「卿(きょう)」は

①律令制で、八省の長官。また、明治の太政官制の各省の長官。
②大納言・中納言・参議・三位以上の人。大臣を公といい、総称して公卿くぎようという。また、参議および三位以上の人の敬称。

説明されている。

なお『広辞苑』には三番目の説明がある。

③英語の称号 Lord,Sir の訳語。

日本では貴族制度がもはやないため、現代において「~~卿」と呼ばれるのは原則英国人ということになる。訳語に「卿」をあてるのを誰が始めたかは、調べがつかなかった。三位以上が卿とされることから考えると、英語の”Knight””Baron””Baronet”も卿とは大盤振る舞いの気がしないでもない。中国語が「卿」と訳語をあてたのを、そのまま受け継いだ可能性もあるか。
 
 最近、井村君江『アーサー王ロマンス』(ちくま文庫)とサー・トマス・マロリー『アーサー王の死』(ウィリアム・キャクストン編、厨川文夫・厨川圭子訳、ちくま文庫)を読んだのだが、アーサー王の配下たちは「ランスロット卿」「ガウェイン卿」など卿づくめである。一箇所気になるのはちくま文庫『アーサー王の死』p127に「直ちに(引用者注、ローマ)皇帝はレオミエ卿という名の王に大軍隊を率いて、急ぎ進軍せよと命じた。」である。ローマ帝国の将軍なら「卿」ではないはずで、「レオミエ卿という名の王」というのが、ローマ帝国以外の国から動員されてきた王だと推測できるが、なぜ卿がついているのかはわからない。原文がどうなっているのか気になる。
 スターウォーズの「帝国」は、元老院政から帝政になったこともあり、ローマ帝国を模しているのはあきらかである。よって、皇帝パルパティーンの配下がベーダー「卿」というのは、私にとって少し不思議な訳である(英語で何と呼ばれていたか。トリロジーのDVD買っておけばよかったか)。

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