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2005年8月 7日 (日)

映画評:『逆境ナイン』

 きわめて不足している時間をやりくりして、七月中旬に島本和彦原作の映画『逆境ナイン』を観てきた。私はここ三年程島本漫画に関心を持っている。『逆境ナイン』はおととしネットオークションで手に入れた。長らく絶版だった漫画が復刊されることは知っていたが待てなかったのである。
 最初の五分ほどは後悔していた。あきらかに安い予算と余裕のない日程で撮られたこと。漫画的表現を再現するために用いられた特殊効果の貧弱なこと。日本映画にありがちな、メジャー映画のどうでもいいパロディがあること。その前に観た映画が『スターウォーズ・エピソード3』だったこともあって、様々な面でその落差にがっかりしてしまったのである。
 だが、劇場を去るときには、私は『逆境ナイン』に満足していた。最大の要因は、主演の玉山鉄二の熱演である。不屈闘志というほぼありえないような人物を、気迫のこもった演技でやりとげた玉山鉄二に満足したのである。私が入ったのが夜十時からの回で、私を含めて男性二人(知り合いではないです)、玉山鉄二ファンとおぼしき女性二人、最後列で観ていた非番の劇場バイトとおぼしき女性二人が観客の全てだったのだが、おそらく玉山鉄二ファンの女性二人はかなり満足できたのではないか。女子マネージャーを演じた堀北真希も魅力を存分に発散させていたので、私以外の男性客が、島本和彦好きではなく、堀北真希のファンでも満足しただろう。
 先に述べたように、映画としては荒い出来だと言わざるを得ない。しかし、それでいいのだ。原作は島本和彦の漫画だが、島本和彦という漫画家は決して絵がうまいわけではない。『燃えよペン』『吼えろペン』に描かれるような、厳しい締め切りをくぐりぬけながら、作者自身の持つ激しい情熱のため、時には破綻しかねない物語を、名編集者ササキバラゴウと一緒になんとかまとめあげた作品が『逆境ナイン』である。そのように荒削りながらも、どうしても読む者に訴えかける魂が鎮座しているのが、島本和彦作品の魅力である。今回の映画も荒いところはあるが、玉山鉄二の演技をはじめ、観る者がどうしても感じいってしまうものがあった。その点で、映画は原作の魅力をうまく再現できていたと言えよう。入れてほしかった台詞が削られていたり、ナインの特訓がなくなっていたり、監督サカキバラゴウが単なる道化になっていたりと不満はあるが、二時間に収めるために、脚本・編集はかなりがんばったのではないか。原作好きなら、映画もきっと楽しめるだろう。
 なお、エンディングロールは岡村孝子の「夢をあきらめないで」が流れる。これを最後まで聴かずに出て行った女性二人は損をしたと思うぞ。

(「TV TARO」E難度チェック風に)TV雑誌「TV TARO」の玉山鉄二インタビューによれば、初日に指を脱臼してしまったのこと。確かに、試合前日にもかかわらず、玉山鉄二が右人差し指にギブスをしている場面がある。

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受信: 2005年8月 8日 (月) 23時06分

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