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2005年7月 2日 (土)

映画評:『電車男』

 電車男は、本などになる前に、友人Aのホームページで存在を知った。ネットで生まれた感動話など眉唾だと普段なら思うところだが、Aが紹介するものは芝居でも映画でも音楽でも本でも見所のあるものばかりなので、当時長かった通勤時間を利用し、ブラウジングできるPHSを使ってログをまとめたページをためしに覗いてみた。最初は、軽い気持ちで読んでいたのだが、ひきこまれてしまって、帰宅途中にこいつはいかんと、乗り換え駅構内の喫茶店に入って腰を据えて最後まで読んだ。壁に向って携帯電話を覗いている中年男が涙していることに気づいた人はさぞかし気持ち悪かっただろう。
 映画になったので、内容を知りたがっていた妻と一緒に観に行った。二時間でまとまるのかやら、AAなどをどうやって映画に取り込むのかといろいろ心配していたが、うまくまとまっていて監督の力量がうかがえた。
 電車男の山田孝之をはじめ、すべての役者が好演していたのだが、やはり圧巻はエルメス役の中谷美紀だろう。サイトの中で「似ている芸能人」とされているからといった安直な理由で選ばれたのなら、大外しするのではないかとかなり心配していた。中谷美紀は演技が神経質すぎて好みの役者ではなかったのだが(歌手としてはけっこう好きですよ)、中谷美紀が得意とする映像向けの非常に細かい演技が見事に嵌っていた。映画として台詞を聴かせる場面が多かったのだが、中谷美紀は声がたいへん良くて心地よかった(しかし、映画を観ているときには歌手もしていたことを忘れていた)。映画版のエルメスをみてしまうと中谷美紀以外にありえないだろうと思えてしまう。ここまで中谷美紀がうまく演じてしまうと、連ドラでエルメスを演じる伊東美咲はかなりやりにくいはずだ。
 メグ・ライアンの出てくるようなハリウッド恋愛映画は、1「男女が出会うが気が合わない」、2「ふとしたきっかけでお互いのよさがわかって接近していく」、3「ふたりが結ばれる直前に、困難がきっかけで仲違いが起こる」、4「二人の恋もかくやというところまでいくが、困難を乗り越えふたりはむすばれる」といった展開が定跡である。
 電車男の場合、結ばれそうな二人の間にある障害は、電車男の自意識だけである。エルメスに対する電車男の引け目が障害になるわけだが、自意識とは馬鹿にできないもので、人間は自意識のために生き死にする存在であるにもかかわらず、ある人物の自意識とは他人にとって必ずしも理解しやすいものではないのである。電車男は終始おのれの自意識と戦い続けているわけだが、その引け目がどのくらい理解されるのか、映画にすると難しいのではないかと思っていた。映画で初めて電車男を知った妻は、涙していたので、うまくいったのだろう(どんなつまらないドラマでも泣くのですが)。
 それにしても、秋葉原のツクモ電機の裏通りで二人が結ばれる恋愛映画なんて、空前絶後に違いない。

追記 その後、テレビガイド雑誌により、テレビ版『電車男』はエルメス視点で描かれ、電車男のライバル?になりそうな二枚目男性を出すなど、けっこう手を加えることがわかった。伊東美咲演じるエルメスの性格付けは「天然」だそうで、この属性を強調するならやりやすいかもしれない。

追記2 米国から自動的にスパムコメントがつけられるので、この記事へのコメントは受け付けない設定にします。 2005年8月16日

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コメント

なるほど。感動しましたか。
これに関してはマスコミがこぞって隠したがる。若しくは避けている。とも言えるサイトがあったりするのですよ。
http://f41.aaa.livedoor.jp/~outerdat/
http://blog.livedoor.jp/dokuo_san/
http://www016.upp.so-net.ne.jp/chosakuken-2ch/
もっとも、感動を冷まされたくない人には危険な果実ともいえる。

投稿: (‡ー・_=)y- | 2005年7月 7日 (木) 09時33分

(‡ー・_=)y\x{ff0d}さん、
コメントありがとうございました。ブログはちょっとだけ覗かせてもらいました。
せっかく教えていただいたURLはまだ見ていませんが、著作権問題に関することですかね。おもしろい事例だと思いますので、成り行きを見守っていきたいと思います。

投稿: Iwademo | 2005年7月 8日 (金) 01時03分

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