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2005年4月29日 (金)

Y博士の思い出

 吉原細見の研究で有名なY博士のお宅に、数日間うかがったことがある。出版社に雇われて、Y博士宅のコピー機を使って、ご蔵書のコピーをとるアルバイトしていたのだった。仕事の合間に、Y博士が顔を出して、珍しい本をいくつか見せてくださったが、その中に鶴岡蘆水の『隅田川両岸一覧』があった。コピー取りの作業に戻って、コピー機の上に和本を載せていると、Y博士がまた顔を出して、隅田川に桜が植えられたのはいつだったっけなと尋ねられた。知らない旨を正直に答えると、Y博士はたいして残念そうな顔もみせずにそうかとおっしゃった。当時、私は江戸文学の研究を始めて日が浅かったため知らなかったのであるが、隅田川に桜を植えられたのは吉宗の頃で、江戸文学を研究する者にとっては非常に基本的な知識だった。おそらくY博士は私の知識を試したのだろう。もうY博士が亡くなって数年経つが、毎年、春になって桜が咲くたびにそのことを思い出す。

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